韓国旅行記

2005年10月15日
早起きして広島空港午前7時30分集合。今日から韓国公演である。ソウルのインチョン空港まで1時間半ほど。沖縄より近い。本来今日の目的地はテグなのでテグに飛べばいいのだが、広島からだと飛行機がない。インチョン空港からバスで5時間南下してようやくテグに到着。ホテルは最高級。非常にリッチな気分になれる。ただしレストランは値段がなく、どうやらかなり高いらしい。外に食べにでかける。集団に合流するという手もあったのだが、3人で歩いて中心部へ向かう。目指すはガイドブックに書いてあるシールビチンカルビというお店。カルビチンが名物だそうだ。しかしガイドブックの地図の通り行ってもまるで何もない。現地調達した地図と見比べ、迷いに迷った挙句、セブンイレブンのおばさんに言葉はまるで通じないものの身振りで場所を教わり、何とかようやくお店にたどり着くことができた。出てきたカルビチンは絶品!カルビを甘辛いタレで煮込んであるのだが、豆など多種多様な素材が入り、何とも言えない素晴らしい味わい。そこにキムチ、ピーナッツ煮、生ニンニク、味噌、サンチュ、白菜などなど様々な野菜が付く。ピーナッツ煮は肉と一緒にサンチュで包んで食べると味わいが増す。生ニンニクは強烈なパンチ。韓国料理はいろんなものを混ぜ、複合的な味わいを楽しむと言うがまさにその通り。どれを加えてもそのハーモニーのすばらしさに感激する。1時間半も歩いてようやくたどり着き、絶品料理に出会う。まさに高い山に登った時のような感動がある。また、その1時間半も街の様子を深く知ることができ、今日は忘れがたい日となった。

10月16日
午前9時30分出発、9km。ホテルから中心部に向かって地下鉄の走っている道路を1.5kmほど。そこから新川の河川内のコースを走る。普段は一人で走るのだが、今回は外国ということで念のためT氏と一緒に走る。快晴。気温は低いが日差しがある中を走ると汗が出る。河川内のコースは整備され、日曜日ということもありウォーキングする人やジョギングする人が多い。川の中に噴水があるというのはなかなか面白かった。

昼食は石焼ビビンバ。どうやらここではパ行とバ行の区別がないらしい。ハングルを読むとピピムパプ。実際にはピピンパッと聴こえる。ホテルの近くのあまり流行っていなさそうなお店。しかし食べてみると結構美味しかった。まだ一品頼むとキムチなどいろんなものが付いてくるという習慣に慣れない。僅か4000ウォンで大量に出てくると感動する。スープは牛肉や野菜の味がよく出ていて美味しい。しかし辛さは私の限界ぎりぎり。キムチは酸味が効いていて私好みの味。日本では石焼ビビンバは赤い味噌をたっぷりと入れて真っ赤にして食べるのだが、こちらではそれ以外のスープ、キムチなど他に辛いものがたくさんあるし、毎食出てくるから控えめにする。量も多く大満足。毎食満腹まで食べて大丈夫だろうか。

テグ市立芸術文化会館へ移動。中は昔の高松市民会館のよう。
今回は最初だけなのでゲネプロ後時間がある。散歩に出かけた。こちらは登山ブーム。ホールの隣にちょっとした山。登ってみると日曜ということもあってたくさんの人。中年夫婦が多い。近くにタワーが見えるので行ってみた。遊園地と併設されていて入り口が逆側にあり、かなり遠回りになってしまった。片道30分。丁度夕日が沈む時間できれいな写真を撮ることができた。

テグ市立芸術文化会館


サッカー場からテグタワーを望む


タワーには遊園地、水族館などが併設されている。
遊園地のゴンドラ、その向こうに夕日。


テグタワー展望台から夕日を望む。


10月17日
午前9時半出発、10.5km。今日はM君、T氏と3人で。T氏はトライアスロン、私はフルマラソン、それに対してM君は健康目的のためペースはややゆっくり目。このペースは疲労感がほとんどなくこれはこれで気持ちいい。1km多分5分45秒から6分ぐらい。今日は平日のため車が多く、空気はやや悪い。昨日と逆に川の上流に行ってみた。こちらの方が中心という感じ。よく整備されていてうらやましい。こちらにも川の中に噴水がある。その噴水にかかる虹が美しかった。広響もスポーツをする人が随分増えた。健康でなければ仕事はできないし、演奏というのは体力的側面がある。また体力的余裕は精神的余裕にもつながる。私の知る限りでは、筋力トレーニング二人(うち一人はトレーナーを務められるほど本格的)、水泳一人、トライアスロン一人、ランニング4人である。調べればもっといるだろう。

プサン文化センターへ移動。ゲネプロ後近くの焼肉屋に入る。地元客で賑わっている。しかし相変わらず文字が読めず、言葉も通じない。ご主人が少し日本語が話せる。筆談を交えて何とか注文。お勧めというので頼んで出てきたのは豚肉だった。こちらではお店の人が焼いてくれるというのが普通らしい。大きい肉はハサミで切りながら焼いてくれる。タレにつけ、サンチュに薬味と一緒に包んで食べる。ご飯にはスープが付いていた。豆腐など入っていてなかなか美味しい。これをご飯にかけ、混ぜて食べる。日本とはいろいろと習慣が違う。食器を持ってはいけない。日本人はついお茶碗など持って食べてしまう。クッパにご飯を入れて混ぜて食べるのは普通のことである。日本では猫飯といって行儀が悪いことだとされている。せっか料理の美味しい国に来ているのだから、コンビニやファーストフードで済ませるというのはもったいない。言葉が分からなくても地元客で賑わっているお店に入ろう。後は何とかなる。これがなかなか刺激的で楽しい。料金は全部で何と3500ウォン。日本円で350円。安すぎる。

夜10時半にホテルに到着。ヘウンデの最高級ホテルである。眺めがすばらしい。LANでインターネットに接続しようとしたら、ホテルのページが出てきてパスワードを求めた。分からないのでフロントに電話すると、親切にも部屋まで来てくれた。ところがその人も分からない。フロントに電話して再起動、URLを打ち込んだりしたが結局駄目。深夜に20分が無駄になってしまった。これ以上時間をかけたくないのでソウルのホテルに期待してここでの接続はあきらめることにした。

10月18日
午前9時半出発、8.5km。距離は短いがT氏と二人のため特に後半スピードが上がった。1km5分丁度ぐらいまで行っただろうか。冬柏公園をまず1周。平日というのにやたらとウォーキングやジョギングをする人が多い。小学生も大勢遠足に来ている。道は日本にもある柔らかい素材で足に優しいが、出来立てのようでシンナー臭い。広安大橋という昨日バスで通った巨大な吊り橋、高層ビルが立ち並ぶ都心、海など眺めが素晴らしい。次に海岸沿いを月見の丘を見ながら東へ。日差しが強く暑い。南下して海沿いに来たためだろう。小学生の集団など人が多く、特に子供は前を見て歩かないので走りにくいポイントもあったが、通り過ぎれば快適。月見の丘の終点まで行って折り返した。

冬柏公園から広安大橋を望む。


海雲台(ヘウンデ)海水浴場から月見の丘を望む。夏のシーズンにはここが人で埋め尽くされるそうだ。


昼食はいいお店もあるようだが、1時に出発するということで時間がないので、朝偵察した時に客がたくさん入っていたホテルの隣のお店に入る。ハンバーグのような肉が韓国風の甘みのある味付けでなかなか美味しかった。多数の付け合せが出るのは同様。

バスでソウルへ移動。遠い。午後1時に出発、休憩3回、ホテルに到着したのは午後8時20分である。休憩ごとにストレッチをしたが、それでも体が固まってしまった。エコノミークラス症候群の原因になりかねない。鉄道好きの私としてはぜひKTXに乗りたいところだが、仕方ない。秋山さんなど数名の方はKTXで移動したそうだが、ソウル駅からホテルまで渋滞で1時間20分かかったそうだ。こちらもソウル近くになってからかなりの渋滞。常態化しているようだ。まあ東京も同じこと。

ソウルの交通マナーには慣れない。非常に危険だ。歩道を車やオートバイが走るのは当たり前。日本人も西洋人に比べれば距離感が近いが、こちらではほとんどない感じがする。ホテルでも後ずさりしながら平気で人にぶつかってくる。後ろに全く注意していないし、気にする様子もない。だからバックする車はとても怖い。後ろに注意しているか信用できないし、注意してバックしているようには見えない。何も気にせずただ単にバックしているように見える。車は右側通行。日本とは逆でこれにも注意が必要だ。特に青信号になった時、左から右折車が来ないかどうかは必ず注意しなければ命が危ない。こちらの車は歩行者に対して突っ込んでくる。
そういえばバスの運転も荒かった。なぜ高速道路でここまで揺れるのか。一つは道路がコンクリートで日本のアスファルトの道路ほど平らではないことが原因だろうが、やはり主たる原因はスピードの速さと運転の荒さだろう。

ホテルから歩いてオニャンプルコギというお店に行く。今回購入したガイドブックは非常に詳しく、載っているお店は感動するほど美味しい。しかしテグでは地図が大まか過ぎて相当迷ってしまった。今回はテグよりも詳しい地図だし道も単純だから大丈夫だろうと思って行ったのだが、そのお店がどの道に面しているのか分からない。しかも歌舞伎町並みの繁華街で街に看板が溢れていて、お店を見つけるのにやや苦労した。
このお店には肉のメニューがプルコギとトゥンシンの2種類しかない。プルコギ、ご飯、ビールを注文。プルコギにはごま油、唐辛子などで味付けされたサンチュと葱、白菜、キムチ、辛い味噌、ニンニクなどが付く。ご飯には豆腐、野菜などが入ったスープ、サンチュ同様の味付けのシソの葉などが付く。プルコギが美味しい。感動。ひたすら「美味しい!」「美味い!」{素晴らしい!」と叫んだり唸ったりしたなが食べる。たまらずもう1人前追加。隣で食べていた女性が日本語が喋れて、親切にいろいろと教えてくれたり注文してくれたりした。感謝。幸せな夜であった。
私は、そういう日本人はたくさんいると思うが韓国料理が大好きである。キムチは毎日食べている。辛いものも好きだ。今日のプルコギのような甘い味付けもいい。韓国海苔も美味しい。今回の旅では食べるということの喜びを満喫している。

このホテルは簡単にLAN接続することができた。ただし有料。1日1万ウォン。

10月19日
午前9時35分出発、10km。まずホテル近くの三陵公園へ。入り口を探して周りを走ったが結局見つからなかった。どうやら駐車場の奥にあったらしい。この公園の周りの歩道は柔らかい素材で足に優しい。一度ホテルに戻り、そこから東へ。オリンピック競技場などのある公園に行こうと思っていたのだがたどり着かない。帰って地図を見るともっと先だった。途中で北上してしまった。明日はぜひ行ってみたい。

昼食は全州ハルモニポッサンで。近道で丘を越えると、そこは意味不明のフランス語のお店が並ぶ高級住宅地であった。意味不明の言葉が並ぶのは日本も同じ。
ポッサンは茹で豚。このお店ではこれをキムチに巻いて食べる。これが相性抜群。キムチは味わい深く、辛味は後から来る。辛い味噌を入れても美味しいし、塩辛でもいい。スープも意外と辛いが美味しい。このガイドブック、今のところ外れなしである。これで行き方が分かりやすければ言うことはない。

料理は全て写真に撮っておけばよかった。気が付くのが遅かった。


世宗文化会館へ移動。ゲネプロ前、近くの景福宮(キョンボックン)を観光。世宗大路(セジョンデロ)はいかにもソウルの中心、韓国の中心という巨大な道路。道が大きすぎ、横断歩道が遠いため景福宮に行くのに偉く遠回りになった。正面には民族衣装に身を包んだ衛兵達が行く手を遮っている。中には入れないのだろうか。東側に行くとあっさり入れた。時間がなく奥までは行けなかったが、何枚かいい写真を撮ることができた。

セジョンデロから景福宮正門を望む。


正門の先にまた門がある。


正門を裏から見た図。観光客が衛兵と写真を撮ったりしている。衛兵はあからさまな付け髭だったりする。


夕食は近くのパプサンモリで石焼キムチオーギョッサルを食べる。コンロの上に巨大で平らな石を置き、その上にこれまた巨大な豚の五枚肉が乗る。本番前にこんなに食べられるだろうか。一瞬ひるんだが、サンチュにキムチなどと一緒に包んで食べるとまるで脂っこさがなく、あっさりと胃袋に入ってしまった。後でもたれるということも全くない。やはりこの野菜に巻いて肉を食べるという韓国方式は正しい。こちらではご飯は別に注文する。ご飯にはお味噌汁がついている。これが結構辛くて侮れない。唐辛子が駄目な人はこの国では一体何を食べるのだろうと思うほど、何にでも唐辛子が入っている。韓国人は世界一唐辛子が好きな国民ではないだろうか。

最初は大きな塊を乗せる。片側が焼けたら店員さんが裏返してくれる。裏を焼きながらハサミでチョキチョキと切る。こちらでは料理にハサミを使うのは当たり前のことである。


10月20日
いよいよ今日で旅が終わる。充実した旅だった。

午前9時25分出発、12km。念願の漢江(ハンガン)河川内を走った。炭川という支流を越え、ソウル総合運動場へ。この支流自体が日本ならかなり大きいが、漢江は比較にならない。幅1km、その幅一杯に豊かな水が流れる。深さは8mあるそうだ。昨日到達できなかったこともあり、この川を目にした感動は大きかった。河川内には立派なサイクリングコースがある。私が自転車をやらない理由の一つが車道を走りたくないということである。こういうコースがあればやってみようかなという気になる。うらやましいことだ。



昼食は時間がないので近くのお店で。店員のおばさんが日本語が話せたので助かった。プルコギがお勧めというので1万7千ウォンとやや高いがそれを注文。一昨日の夜のお店は同じプルコギでも炭火で焼き、胡麻油や唐辛子で味付けしたサンチュ、葱などと一緒に食べた。こちらはダシをたっぷりとかけ、どちらかというとすき焼きのように煮る感じ。それをサンチュでキムチ、辛い味噌などと一緒に巻いて食べる。一昨日のお店ほどではないが、十分満足した。キムチの味はやや劣る。今回最も美味しいと感じたキムチは、昨日のポッサンのお店。非常に味わい深く、辛味は後から来る。やはりこちらでも牛肉は高く、豚肉は安いようだ。料理の値段がかなり違う。



空港に移動。途中免税店に寄る。あまり興味がないので早々に退散し、近くを散歩したがこれまた面白くなかった。免税店は空港内にこれでもかというほどあるのでこの店に寄ることに意味はない。

空港に到着。免税店を歩いてみたが、広すぎる!ランニングで往復しても結構満足するのではというほど広い。そこに猛烈な数の免税店。店員が話しかけてくるのがややうるさいが、便利なこともある。お土産でこれというものはない。キムチや韓国海苔は輸入されているので特に買う気にはならない。しおり、キーホルダー、ストラップ、名刺入れと記念に小物を少々購入。

広島空港へ。何とも近い。1時間半で着く。東京広島間とあまり変わらない。韓国は何と言っても料理がすばらしかった。ずっと韓国料理でもいいぐらいである。辛いのが苦手の人が数名いたようだが、そういう人にとっては韓国旅行は拷問のようなものだろう。韓国料理店に入れば唐辛子の入っていない料理を探すのに苦労するほどだし、辛さは私でも時折限界ぎりぎりのものがある。

韓国公演中に小泉首相が靖国神社参拝。非常に迷惑だ。遺族の想いも分かるが、近隣諸国の感情に配慮するのは当然のこと。別の方法を考えた方がいい。どうなるかと思ったが、韓国の方は皆親切だった。運転の荒さに負の側面も見えるが、基本的には皆さん親しみ深い人たちである。また料理を楽しみに行きたい。今度は簡単なハングルの辞書を持って、もう少しハングルが読めるようにして行こう。

おわり  2005年10月22日