2008年9月三俣蓮華岳・助六岳・鏡平

「烏帽子岳・水晶岳・鷲羽岳」より続く。


4時半起床、5時朝食。

早朝の槍ヶ岳。




5時45分出発。
まずは三俣蓮華岳に登る。
しばらく登って振り返る。
泊まった三俣山荘、昨日登った鷲羽岳ワリモ岳が朝日に染まっていた。




槍ヶ岳へと続く道。
右には穂高岳も見える。
槍ヶ岳は標高3180mで日本で5番目に高い。
穂高岳は標高3190mで3番目。
穂高岳の方が10m高いはずだが、遠方にあるせいで低く見える。




7月に槍ヶ岳に登った時には実に多くの高山植物が花を咲かせていて、そのために別のページを作らなければならないほどだった。
今回は9月なのでほとんど花はない。
三俣蓮華岳に登る途中、自分の左側に珍しく青く美しい花を見つけて撮影した。
そして視線を戻すと誰かの足跡が上へと続いていた。
当然ここが道なのだろうと登り出したのだが、何かおかしい。
砂利道の急斜面で、ずるずると崩れるのだ。
やばい。
しかし登るよりも下る方が難しいし、誰かの足跡があるのだからきっと登れる。
覚悟して登ったら何とかなった。
危なかった。
八ヶ岳でもそうだった。
どこが道なのか分かりにくいところはたくさんある。
その度にきちんと見て考えなければならない。

実は途中からカメラがリュックに入らなくなっていた。
山では山小屋でもゴミを捨てることはできない。
水は買わないと生きていけないが、買うとゴミが増えるのである。
ペットボトルがどんどんと溜まり、潰して小さくはしてあるのだが結局かさばってしまった。
途中でいい方法に気がついた。
山小屋ではペットボトル以外に、水だけを売っている。
それを買って自分の持っているペットボトルに入れるのだ。
その方が安いし、ゴミが増えない。
危険な場所でカメラをリュックにしまえないというのはあまりよろしくない。
今度からそうしよう。

ひやっとした数分後には山頂に到着。
山頂から槍ヶ岳を望む。




これが黒部五郎岳。
もう1日あれば登れたが、すでに2泊3日の行程、これ以上は延ばせない。
次回薬師岳とセットで登ろう。




延々と続く穏やかな尾根道。
右に焼岳、左に穂高岳が見える。




槍ヶ岳へと続く尾根道。
この裏銀座と呼ばれるコースは、槍ヶ岳への登山ルートでもある。




秋色に染まる山肌。





双六岳山頂に到着。
向こうに黒部五郎岳が見える。




振り返るとさっき登った三俣蓮華岳。
右に鷲羽岳、水晶岳、左には薬師岳が見える。




穏やかな丘陵、その向こうに笠ヶ岳。





双六岳からの下りは結構急だった。
巻き道ルートとの合流地点に到着。
右は鷲羽岳、左は三俣蓮華岳。




双六小屋に到着。
ここから西鎌尾根を通って槍ヶ岳に向かう人もいる。




池の向こうに見えるのは笠ヶ岳だ。




斜光で輝く緑が美しい。
槍ヶ岳と穂高岳がようやく逆光から逃れつつある。




槍ヶ岳へと続く西鎌尾根。
いつか通ってみたい道だ。




しばらく行ってから振り返ると、双六小屋が小さく見えた。
その向こうに見えるのは鷲羽岳。




この道危ないよ。
片側が絶壁で落ちたら一巻の終わり。
しかも道が狭く、絶壁の方に傾いている。
もしここで風が強かったら、しかも雨が降っていたら?
ガスで視界が悪かったら?
条件のいい日に、最悪の条件になった時のことも考えておきたい。
もちろん天気のいい日に登るのがベストだ。
予定は柔軟に。
「大気の状態が不安定」など悪い予報が出ている時は中止もしくは延期すべきだ。
山を甘く見てはいけない。
この日しか空いていないからと、無理に登ってはいけない。
白馬岳の事故は確かに不運だったと思う。
あの道はたくさんの人が歩いている道だった。
でもやっぱり雨が激しく降り出したら引き返すべきだ。
特にあの道は雪渓。
普通の道よりもはるかに危険だ。




鏡平山荘が見えてきた。





鏡平山荘に到着。
ここでお弁当を食べ、水を補給する。




鏡平からの有名な槍ヶ岳の眺め。
撮影には数秒しかかけなかったのに、後で見てみるとゾクッとするほどの写真が撮れていた。
さすが槍・穂高連峰の絶好の展望地と言われるだけのことはある。
それ以来この写真をデスクトップテーマにしているが、全く見飽きることがない。




笠ヶ岳の雄大な眺め。
近いうちに登りたい山である。




急げば2時のバスに間に合うかも知れない。
もし乗り遅れると、その後の乗り継ぎが悪く帰宅が深夜になってしまう。
幸いわさび平小屋への小池新道は平らで大きな石が並んでいて下りやすい。
道は違うが、前日追い抜かれたカップルよりもさらにずっと速い速度で駆け下った。
途中すれ違った人たちはあまりのスピードにびっくりしたことだろう。
何がいちばん大変かというと、脳の計算である。
次の一歩をどの岩に着地するのか。
その岩は動かないか。
そうした膨大な判断、計算を瞬時にこなしていく。
だから頭がいちばん疲れた。
眺めがあまりなくなってきたため立ち止まることもなく下ったが、その中でも何枚か撮ったうちの1枚。
穂高連峰を望遠で撮影。



新穂高温泉に到着。
バス停に着いたのが1時55分。
何と発車5分前である。

新穂高温泉から松本へのバスは1日にたった2本!
それ以外は平湯温泉で乗り換える。
平湯温泉はバスターミナルの上が温泉になっているので便利だ。
乗り継ぎのバスを待つ間温泉で体を洗う。
やっと髪が洗えた。
くしゃくしゃのぺっちゃんこで見られたものではない。
槍ヶ岳山荘では顔も洗うなと言われた。
水の乏しい山で数日を過すと、平地で蛇口をひねれば水が出るありがたみがよく分かる。

松本までバス、松本からは特急で帰宅。

これほどの好天が3日も続くことが1年に何度あるだろうか。
もちろん狙って行ったのだが、本当に幸運だった。
ひょっとすると7,8月よりも9月の方がいいのかも知れない。
というのは、水蒸気が少なく、からっと晴れた日が多いからだ。
山は普通、朝晴れていても昼前には太陽に温められた地上の空気が上昇し雲ができる。
これほど一日中晴れるということは普通のことではない。
とにかく晴れていなければ基本的にはいい写真は撮れない。
もっと上のレベルではわざと雲をかけるのだが、それは膨大な使えない、まるで展望がなかったりする眺めの中で何日もただひたすらじっと待つ、それができるよほど山に命を懸けたような人かプロにしかできないことである。
私ぐらいのレベルではとにかく晴れていることが重要。
そのためにはどれだけ予測しいい日を選ぶことができるかということが非常に重要だ。

幸福な3日間であった。
これからの人生は、この3日間の思い出だけで幸せに生きていけるのではないかと思えるほど幸せだった。
今日は10月17日。
9月に登ったのに、写真の量が膨大だったこととかなり忙しかったことで時間がかかってしまったが、写真を見るたびに幸せな気分になることができた。