2009年9月北岳・間ノ岳・農鳥岳2


昨日の夕方は雲が降りて、富士山から北アルプスまで壮大な眺めを楽しむことができた。
夜中にトイレで外に出た時には、天の川がはっきりと見えた。
さそがしご来光は感動的だろうと思ったら、曇っていてまるで駄目。
それどころか雪が降っている。
この雪の中を進むのか?

5時20分にご来光を見てそれから朝食と聞いていたのだが、まるで見えないので5時15分頃には朝食が出てきた。
6時に小屋を出る。
気温は氷点下2度。
フリース、ダウン、雨具上下、ゴアテックスの真冬用手袋、リュックカバー、あるものを全て着る。





木の葉に雪が積もり始めていた。
視界も悪く、不安がよぎる。
天気予報はこれでもかというほど注視していたのに。
今日の展望がメインイベントだったのに。
山は思うようにはならない。





しばらく登って肩の小屋を振り返る。













雲が切れて展望が出てきた。
これはラッキー!






来た道を振り返る。
向こうに仙丈岳が見える。





望遠で撮影すると、人が二人立っているのが見える。
それにしても何とも岩だらけで頼りなさそうな道だ。






午前6時50分、北岳山頂に到着!
日本で2番目に高い山である。






展望があったのは7時半頃まで。
その後はまるで駄目。
ともかく北岳からだけでも展望があってよかった。






北岳山荘に向けて尾根道を南に下る。
右が西、左が東。
現状では常に西からの強い風が吹き、東から上ってくる雲との勢力争いに勝っている。
その後東からの雲が優勢になり、展望がまるでなくなる。






ごろごろとした浮石だらけの急な下り坂を慎重に下る。






細い尾根道で、登ってくる人とすれ違う。







しばらく下り、仙丈岳を振り返る。






北岳を振り返る。







望遠で撮影すると、何組もの登山者が見える。






北岳山荘が大分近づいてきた。
北岳山荘の向こうには、強い西風で吹き飛ばされる雲。






北岳山荘で少し休ませてもらった。
ここは何と水洗トイレだそうだ。
驚くべき山小屋である。







仙丈岳の右に見えるのは、位置的には甲斐駒ケ岳なのだが。






尾根道を歩く登山者。
今回は北岳・間ノ岳・農鳥岳の白峰三山縦走。
これはいくつものガイドブックに書かれてある有名なコースなのだが、間ノ岳から先はたった一人とすれ違っただけ。
これほど人と合わないとは思わなかった。
視界が悪く、雪、霰、強風が吹く中ほとんど人と合わないというのは心細いものがある。
ほとんどの人は間ノ岳往復登山だった。
この写真の人たちも荷物はほとんどなかったので、恐らく時間的に見ても北岳山荘に宿泊し、そこからまず間ノ岳を往復し、その後北岳を経由して下山という計画だったのだろう。










あれは間ノ岳か?
視界が悪い中、ペンキの目印だけが頼りだ。






間ノ岳に到着。
標高3189m、日本で4番目に高い山である。
何にも見えない!













農鳥小屋に到着。
相当視界が悪い。
まだ午前11時。
ここでもう1泊しようかとも思ったが、早すぎる。
「農鳥小屋」で検索すれば分かるが、ここのおやじは相当評判が悪い。
小屋を覗いても誰もいない。
探したら犬小屋のようなところに犬と一緒にいた。
非常に嫌な顔をする。
「何の用だ?」
「トイレをお借りしたいのですが。」
「どうぞ。」
「どこにありますか?」
「あっちだよ。」
これではとても泊まれない。
かなり粗末な小屋で、もし泊まっても相当寒いだろう。
談話室に本などあれば暇を潰せるのだが、そんなものはありそうにない。
屋根を借りてお弁当を食べようと思っていたのだが、とてもそんなことは言いだせず、小雨が降る中外で急いで食べる。
寒い。






視界が悪い中、尾根道を進む。
迷ったら命が危ない。






間ノ岳で引き返す人が多いのは分かる。
この先の岩場はかなりハードだ。


















視界が悪く強風が吹き付ける中、この滑りやすい急な坂を登るのか。
突風で滑落しないよう気を張って通過する。


この後の道が分かりにくかった。
西農鳥岳を巻いてから、逆方向のように思えた。
もし道に迷ったら大変だ。
地図とコンパスで確認、なるほど確かに東に進むので合っている。


農鳥岳山頂に到着。
標高3025m、日本二百名山。
展望はずっとないままである。

















大門沢下降点。
もしここが分からないとやばいと気にしていたところに大きな目印があり、ほっとした。



ここからは沢を見ながら下る。
奥深い森になり、雨も風も止み、気温は高度を下げるに従って高くなる。
徐々に着ているものを脱ぎながら下る。
ただ、雨に濡れた急な下り坂で、岩も砂利も土も木も全て滑る。
結構大変な下りである。















今回はいろんな怖いところがあった。
ハードな岩場、左は絶壁、右から強風などなど。
しかし、実はいちばん怖かったのはこの橋である。
パイプの橋は滑りやすく、しかも固定されていないのでぐらぐらと揺れる。
間ノ岳から先は一人としかすれ違っていない。
万が一落ちて骨折して動けなくなったら命が危ない。
橋を使わず、下の岩を渡ろうかとも思ったが、水量が意外と多く、岩も濡れていて滑りやすく危険だ。
両手両足で慎重に渡った。
大門沢小屋で一緒になった70歳ぐらいのお婆さんは、大丈夫だったのだろうか?


大門沢小屋に到着したのは午後4時45分。
所要時間10時間45分。
休憩時間や写真撮影の時間を含めても、思ったよりも時間がかかった。

今夜の宿泊者は70歳ぐらいのお婆さん、お婆さんの雇ったガイド、私の3名。
5時からの夕食で色々と話をした。
「あなた20代でしょう?」
「いや、44歳です。」
「えー!私の息子と同い年だ。」
若いころから山に登っているベテラン登山者のようだ。
それにしても、70歳で明日はあの延々と続く急な坂道を登るのか。
すごい。
あの橋など大丈夫なのだろうか?

この大門沢小屋はホームページも充実している。
若いご主人もなかなか感じのいい人だ。
山小屋はインターネットで評判などを調べてから泊まった方がいい。
知らずに農鳥小屋など泊まったら大変だ。
ガイドの人も、農鳥小屋の主人とは何度もやりあったらしい。

この大門沢小屋は大量の水の流れる沢沿いにあるため水が豊富で、何とシャワーを浴びることができる。
500円払って専用のコインをもらう。
ご主人がボイラーの火を点け、5分ほど待ってから行く。
時間は4分間であと何秒という表示が出る。
気持ちいい!

<人がいるところを登る>
一人での登山は何かあったら怖い。
骨折して動けなくなったら?
滑落して自力で登れなくなったら?
今回携帯はどこも通じなかった。
間ノ岳を過ぎてからは、たった一人とすれ違っただけ。
なるべく人のいるところを通った方がいい。
混雑した山小屋は嫌だが、日帰りならあえて休日に登るという手もある。
平日でもなるべく人気の山の人気のあるコースを通ろう。

<携帯>
今回携帯は全く通じなかった。
特に、大門沢の下りでは2か所にドコモの携帯が通じると書いてあったのに通じなかった。

<迷ったら引き返せ!>
これは×と書いてあるのか、それとも矢印なのか、判別できない。
あちらから登山者が降りてきた。
さっきも登りと下りが別の道になるよう指示が書いてあった。
それに、これは確かに道だ。
踏み跡がある。
きっと大丈夫だろうと思ってしばらく登ると、何だかおかしい。
おかしいと思った瞬間に引き返すべきだった。
多分このまま上がればさっきの道と合流するはずだ。
ところが上がっても合流しない。
やばい。
全てが浮石のようなところで、明らかに登山道ではない。
こういうところは登るのは簡単でも降りるのは難しい。
ここまで来たのだから、もう少し行ってみよう。
これは完全に遭難者の心理だ。
しばらく行って、ようやく先ほどの登山道に戻ることができた。
さて、どちらに進むべきか。
地図とコンパスで確認、左だ。
迷ったら引き返せ!
命が危ない。

<重り>
皆さんは自分がどれぐらいの重りを背負って生活しているか計算したことがありますか?
例えば体重50kg、体脂肪率20%の人なら、脂肪は10kg、つまり10kgの重りを背負っていることになります。
人の生存に必要な必須体脂肪は3〜4%と言われています。
つまり、体重50kgの人なら1.5kgから2kgぐらいの脂肪があれば問題ないことになります。
(女性は体脂肪率が14%以上でないと問題が起こるそうです。)
山に登る時には、自分がどれぐらいの脂肪を重りとして背負っているか、それに対して十分な脚力などの筋力はあるのか考えてから登りましょう。