2009年12月1日大野権現山


今日は絶好の登山日和で気温も高い。
紅葉もまさに見頃。
電車で宮内串戸駅に移動。
改札を出て進行方向右(西)に下りると、真新しいバス停がある。
正面には大野権現山が見える。
広電バス津田行きに乗り、佐伯工業団地入口下車。
所要時間は20分ほど。
バス停を11時前に出発。
バス停の標高がすでに320mある。
そこから工業団地内を進み、団地に入り、突き当りを左に曲がりしばらく行くと登山口がある。
ここの標高が350m。
まるで小川のように水が流れる登山道をしばらく登ると、徐々に道なき道となっていく。
ほとんど藪こぎ。
周りを見渡しても、どこも道のようであり道でないようでもある。
赤いテープだけが頼りだ。
これはたくさんある。
ところが途中でどう探しても次のテープが見つからない。
赤い杭ならある。
仕方がないのでこれを頼りに急な尾根をどんどんと登る。
「上に登れば何とかなる。」
その考え、間違ってますよ。
「迷ったら引き返す。」
これが正しい。
ところが言うは易し、行うは難し。
熱くなっていると引き返すのは非常に困難だ。
「迷ったら休め。」
せめてこれぐらいは実践したい。
ついに杭もなくなった。
それでも登る。
すると別の山の山頂に着いた。
そこから先はどう探しても道がない。
枯れ木にコーヒーの缶が刺してあった。
イタチの糞と同じ、私はここに来ましたよという印だ。
あたりを見渡すと、東に大野権現山が見える。
あれだ!
仕方がないので引き返す。
急斜面には落ち葉が分厚く積り、滑りやすい。
下っているうちに元の道も分からなくなった。
やばい。
鞍部に出て、そこから谷沿いに進もうか、それとも登ろうかしばらく迷った末、登ることにした。
しばらく登ると、赤いテープ!
「あった!」
久しぶりに強烈に高い声で叫んだ。
テープはあるものの、結局は道なき道。
しばらく行くと広い道に出た。
その道を歩きながらふと気がついた。
そういえばGPSをつけているじゃないか。
軌跡を表示すると、スタート地点に戻ろうとしている。
再び引き返すと、左に登る道があった。
そこを登る。
GPSは丁度藪になったあたりでなぜか停止されていて、その後の軌跡がない。
せめて方角ぐらいは確認しましょうよ、方位磁針も持っているんだし。
ここからの登りはこれまで経験したことがないほどのとてつもない急斜面。
しかも道なき道で落ち葉が分厚く積っていて滑りやすい。
木を掴み、岩を掴み、両手両足でよじ登る。
山頂は見えているし、方角に間違いはない。
道を間違えたことでさらに熱くなっている。
この際休憩なしでこの急坂を登り切ってやる!
心拍数が高いまま体に負荷をかけ続けるトレーニング登山となった。
ようやく山頂に到着。
標高699.5m。
ここからの眺めはまさに絶景!
南には船倉山、そこから僅かな海を隔てて宮島、東には広島市外、西の山々も美しい。
時を忘れて眺めを楽しむ。
山頂周辺にはいくつか展望のいい巨大な岩があるが、特に山頂から南に藪を少し入ったところにある岩からの眺めは最高だった。
来てよかった。


西に連なる山々。





北方面。
左手前に通ってきた佐伯工業団地が見える。






山頂の岩によじ登り、そこから見た山頂広場。






南には、僅かな海を隔てて宮島が見える。






南方面を望遠で撮影。
手前にベニマンサク湖が見える。
車のある人はここから登った方が楽だろう。






西方面。







南西方面。
左に宮島。





しばし呆然と過ごした後、来た道を帰る。
下りも大変だ。
落ち葉でずるずると滑る。
鞍部から先の広い道を歩きながら思った。
この道は来る時通っていない。
このルートには標識が一つもない。
山頂にすらない。
分かったのは、赤いテープは大野権現山へのルートだけではなくいくつものルートを示しているということだ。
なぜこの広い道を通らず、藪に入ってしまったのか。
恐らくそこに赤いテープがあったからだろう。
赤いテープ自体が違う方向を示しているということは登っている最中は全く思いつかなかった。
これからは気をつけよう。
というわけで、このルートを通るのは上級者以外の人はやめておいた方がいい。

下山途中間違えて登った一つ西側のピークが見えた。




山頂からの眺めは本当にすばらしい。
私は車がないので一人では行けないが、ベニマンサク湖のおおの自然観察センターから登れば、きっともっと楽に登れるのだろう。
標高差350mでなぜガイドブックに健脚向きと書いてあるのかと思ったが、道が悪いし急すぎるからなのだ。
バス停に2時40分に到着。
休憩時間を除き所要時間3時間15分。
迷った時は1時間オーバーを覚悟したが、結局はガイドブックのコースタイムよりも15分余計にかかっただけだった。
迷わなければ2時間半ぐらいで往復できただろう。
しかしよく迷った後無事に山頂まで辿り着き、戻って来れたものだ。
人間極限状況や危機的状況では普段忘れいてる、生物としての根源的な力が出る。
精神的にも肉体的にも解放され、思わぬパワーが出て危機を乗り切ることができる。
演奏家として、このパワーを使わない手はない。
自分にそんな力があるということを、久しぶりに思い出した。