富士登山記

<富士山登山をしようと思っている方へ>
富士山はかなり厳しい山です。トレーニングもせず、装備も整えずに登ることは自殺行為です。普段運動していない人、体重の重い人、体脂肪率の高い人はかなり苦労することは間違いありません。甘い気持ちで登ると痛い目に遭います。必ずガイドブックを読み、装備を整え、他の山に登る、重りを巻いてウォーキングをする、ランニングするなど体を鍛えてから登りましょう。登山者10人のうち4人が高山病などの理由でで途中で下山するということをお忘れなく。私も途中で、足をくじいて山小屋に1泊しこれから下山するという外国人男性、動けなくなり寝込む若い女性など登山を途中で断念するする人を数多く見かけました。
ツアーに参加すれば何とかなるというのも甘い考えです。むしろ、自分のペースで歩けないということもありますし、山小屋に詰め込まれ身動きが取れず、眠れなかったことで高山病になり途中で下山したという話も聞きます。ツアーか個人かはよく考えて決めてください。
装備にはかなりお金がかかります。ストック2本は登山時には安定性を増し、足の筋肉の負担を軽減します。下山時には膝への負担を軽減し膝を守る役割もします。できれば持っていた方がいいでしょう。雨具上下は必須。地上と山頂との気温差は20度。冬用の暖かい帽子、フリース、ゴアテックスの手袋など防寒着も必須です。登山靴、登山用靴下ももちろん必要。下着は綿を避け、ポリエステルなど速乾性の高いものを着ましょう。下山時に靴に砂が入るのを避けるため、スパッツもあった方がいいでしょう。大きめのリュック、それに最初からリュックカバーを被せておきましょう。雨は降ると思っておいた方がいいです。途中で雨具を着たり、リュックカバーを被せたりするのは時間のロスが大きいので、最初から雨が降ってもいいような格好をしておいた方がよいでしょう。
私は今回、台風の関係で急遽予定を変更したために、前日夜に五合目の山小屋に入り、翌朝5時半からの日帰り登山となりましたが、これは登山開始から下山まで10時間半とかなりハードな登山になるためお勧めできません。できれば昼頃五合目に到着、それから七合目か八合目まで登り、そこの山小屋で一泊し、翌朝山頂を目指した方がいいでしょう。
登山シーズンは7月20日から8月末までですが、8月後半は台風などで天気が荒れる可能性が高くなります。できれば8月前半までに登った方がいいでしょう。予定はできるだけ柔軟に変更できるようにしておきましょう。悪天候時に登山するのは無理です。またできるだけ週末は避けましょう。普段2時間のところを混雑のため4時間かかったという話も聞きます。登山者のお尻ばかり見て登るのも気分があまりよくないでしょう。

2005年8月23日
本来25日昼頃五合目到着、それから七合目まで登りそこの山小屋で一泊して翌朝山頂を目指すという予定だったが、何とその日は台風直撃。23日の朝急遽予定を変更。山小屋も五合目のところに変更した。それから9月25日の室内楽の合わせへ。一度帰宅し1時間ほど用意して出発。結局五合目の山小屋に着いたのは午後9時過ぎ。1階の土産物屋には、ご来光を見るためにこれから登山するという人が数名ヘッドランプなどを装着していた。しかしご来光ご来光と言うが、一体ご来光が拝める確率は何パーセントなのか?私は多分20%台だと思う。4回に1回程度だろう。新幹線からだってその程度の確立でしか富士山は見えない。夜間の登山は、暗く、景色が見えず、視界は狭く、寒く、ストレスは相当に大きい。その上に空気が薄く高山病になりやすい。そこまでして4回に1回しか拝めないであろうご来光を見るために夜間登山するというのはよく理解できない。基本的に私は夜山を登るという気は全くない。山というのは昼間明るい時に登るものである。
山小屋は一部屋貸切。8月後半の平日、台風が近づいている、普通泊まるなら七合目か八合目、五合目に泊まれば、2泊は贅沢だし、日帰りはきつすぎる。空いているのはそんな理由からだろうか。標高2300m。すでに空気が薄い。これからどうなるのだろうか。残念ながら緊張のためかよく眠れず、夢をたくさん見た。

8月24日
午前4時45分起床。15分で用意しようというのは考えが甘かった。外を見ると雨が降っている。雨具上下、リュックカバー、スパッツ、登山用ストックの長さ調整などで時間がかかり、出発は5時半になってしまった。

河口湖口からはしばらく水平の道を歩く。雨が小降りになってきた。こんな早朝に下山する人がいる。頑張って!と声をかけられた。

六合目付近から山頂を望む。あそこに見えるのは山頂なのか、山頂はまだ先なのか、よく分からない。いずれにしても遥かな道程である。



他の山が見えたのはこの時だけ。これ以外は富士山以外は全く見えなかった。景色がよければ印象はまるで違っただろうが、新幹線からだって富士山は3,4回に1回しか見えない。富士山から下界が見える確立だって同様のはずだ。



山小屋で働く人たち。アルバイトの人が下山するのを見送っていた。



荒涼とした大地の上に月がぽっかりと浮かぶ。



岩場。気をつけないと怪我をする。



標高3000m。この辺りから空気は薄く、かなり苦しい。途中ツアーの団体と一緒になったが、その時ツアーコンダクターからいいことを教わった。深呼吸である。それまで呼吸の回数を増やしていたが、それではあまり効果がない。ゆっくり登りながら常に深呼吸、立ち止まってまた深呼吸。携帯酸素も持っていったが、深呼吸の方が効果的だった。



まだまだ先は長そうだ。



標高3100m。山小屋では水はまず調達できる。500ml500円程度が相場。カレーなどを販売している山小屋もある。こちらはインスタントで1200円程度。自分で水や食料を持って登ることを考えれば安いものである。



標高3250m。ここに神社がある。



神主さんが出てきた。ちなみに山小屋の屋根は、暴風雨でも吹き飛ばないように大きな石をたくさん乗せてある。



遥かに遠いような、大分近づいたような。あそこに見えるのは山頂だろうか。



下山路を走るブルドーザー。各山小屋に物資を届ける。



下を見下ろす。さっき休んだ山小屋に雲がかかりそうだ。雲は下から急速に上ってくる。その様子はまるで雪崩のようだ。



あの石垣が山頂だ!最後の鳥居が見える。頑張れ!フーハー!



ゆっくり登る。苦しい。



富士山山頂!これは山頂にある神社。



山頂には山小屋が並ぶ。そのうちの1軒でカレーライスを食べているうちに感動が込み上げてきた。
この後山頂は急速に天気が悪くなり、数メートル先も見えない状態に。風も強くなり、山小屋の人にもやめておいた方がいいと言われ、残念ながらお鉢参りは断念した。お鉢参りができない確率もかなり高いようだ。山頂の自然は厳しい。かなり寒く、持ってきた防寒着を着込む。



下山路は長く、長く、そして長い。足にかなりの負担がかかる。今回は右足親指の爪が真ん中から半分割れた。こんなことは過去経験がない。猛烈な負荷である。

落石を避けるためにこのゲートの中を通る。



ようやく生き物のいる世界に戻ってきた。再び感動。空気も濃く、体が喜んでいる。



その後の日記

8月25日
午前11時半というのにすでに激しい雨。本来なら今日富士山に出発する予定であった。9時間半睡眠にもかかわらず、時々意識が遠のく。さすがに富士山山頂日帰りはきつい。ただし、足の筋肉に関して言えば疲労度はハーフマラソン以下。サポートタイツとストック2本も疲労軽減にかなり役に立った。

8月29日
富士山で両耳の上部を日焼けしてしまった。今触ったら、大きな皮が取れた。本来山では全体につばの付いた帽子がいいのだが、先日好日山荘やAIGLEで探したのだがどうも気に入らない。それでランニングで使用している前部にのみつばの付いた帽子を被ったのだが、これが失敗だった。次回からはちゃんと登山用の帽子にしよう。ちなみに日焼け止めクリームも耳たぶには塗ったのだが、上部を忘れていた。耳なし芳一状態である。ランニング用の帽子もしかし役に立つ。雨の時、この帽子を被り、その上にレインコートのフードを被る。そうすれば雨で顔が濡れたり、雨が目に入って前を見づらいという状況は避けられる。真冬のランニング用の耳まですっぽりと入る暖かい帽子も寒い頂上で役に立った。
富士山の長い下りで、右足親指の爪の真ん中が外側から半分折れた。富士山の下りは足への負荷が大きく、突き指をしたり内出血したりするという話は聞いていた。私もかなりの負担を感じたので、下山してから靴下を脱いで調べてみたら折れていた。履き慣れた専用の登山靴と登山用の分厚い靴下。サイズはぴったりで隙間はない。ストック2本を使用し、足への負担を軽減しながらゆっくり下った。これ以上対処のしようがない。富士山の下りには気をつけた方がいい。しかし幸い内出血はなく、ランニングにも影響ない。